排出量を減らしつつ食料生産量を増加 – 空気と電気を役立てる方法

15 Nov 2022

排出量を減らしつつ食料生産量を増加 – 空気と電気を役立てる方法

世界でより多くの食料を生産する必要がありますが、その一方で、温室効果ガスの排出量も削減していかなければなりません。そのためには、生産量の増加と環境フットプリントの削減に役立ち、同時に経済的でもあるソリューションが酪農家に必要です。牛乳加工業者と食品業界では、「ネットゼロ」の目標を達成するため、サプライチェーンのフットプリントを削減する新しい方法が必要とされています。

現に、国連によると世界の人口は2030年までに11%増加して86億人に達すると言われており、これは乳製品の「牛乳」の需要が21%高まることを意味しています。欧州委員会はグリーンディールの一環として、現在のEUの食品モデルをより持続可能なモデルに移行することを目的とした「農場から食卓まで」戦略を策定しました。この戦略で掲げる目標のひとつに、2030年までに農薬と肥料の使用量を50%削減するというものがあります。この課題に取り組むため、GEAはノルウェーのアグリテック企業N2 Appliedと提携し、化学肥料の代わりとなる持続可能な肥料を提供しています。それと並行して、家畜スラリーから排出されるアンモニアとメタンの削減にも取り組んでいます。このアプローチはすべて酪農場で、空気と電気のみを使用して行われています。

アンモニアおよびメタン削減の課題

スラリーとして知られる液体堆肥は、酪農経営の持続可能化に大きく役立つと言われています。それはどうしてでしょう? 家畜スラリーは植物や有機物の栄養となる天然肥料で、土壌の健康状態を改善し、より良い成長を促す効果があります。しかし、最適に施肥するには、大部分の作物にとって窒素含有量が比較的低く、スラリーの貯蔵中や圃場での施用の際に非常に多くの窒素が失われる可能性があります。失われた窒素は最終的にアンモニアとなって環境汚染の原因となり、さらに化学肥料の必要性を高める原因にもなっています。化学肥料の生産および施用と糞尿管理の組み合わせは、農業での主な温室効果ガス排出源のひとつとなっています。

家畜スラリーは植物や有機物の栄養となる天然肥料で、土壌の土力を高め、より良い成長を促す効果があります。

家畜スラリーは植物や有機物の栄養となる天然肥料で、土壌の土力を高め、より良い成長を促す効果があります。

収量を増やしつつ排出量を削減して、世界の食料生産を改善

このような損失を補うために、ガスや石炭などの化石燃料を使用して化学肥料を生産し、それをさらに世界中に輸送し、作物や野菜の栽培に必要な栄養素を酪農家に届けているのが現状です。「肥料の生産や輸送で大量の温室効果ガスが排出されている上に、圃場での散布中や散布後に大量の窒素や笑気ガス (N2O) が失われていることは周知の事実です。」N2 Appliedの事業開発部長Trond Lundが説明します。目標は、収量を増加しつつ排出量を削減することで、世界の食料生産を改善する方法を見つけることです。

この課題を解決するプラズマ技術

この新技術は、空気と電気のみを使ってスラリーを処理し、肥料の現地生産を可能にするものです。そうすることで、有害ガスの排出量を大幅に削減でき、同時に作物の収量を改善する効果的な肥料を自分で生産できるようになります。それを可能にするのは、いわゆるプラズマ技術を使用したソリューションです。電気と空気を使用して空気中の窒素を直接スラリーに添加し、窒素含有量を増加させます。アンモニアの損失を防ぎ、メタンが排出されないこのスラリー処理は、業界規模で気候コミットメントの目標を達成するのに役立つ、望ましいソリューションであると言えます。 

プラズマ技術は実際に画期的な技術で、ちょうど落雷があったときのように、入射エネルギーによって空気の分子構造を分割します。電気と空気を用いてプラズマガスを生成し、スケーラブルな機械の中で雷のシミュレーションを行うのです。そうすると、プラズマガスが液体堆肥流に吸収されます。 

最終製品は窒素強化有機肥料 (NEO) となります。通常のスラリーと同じ特性を持つ一方で、より多くの窒素が含まれ、温室効果ガスの排出量も格段に減少します。この肥料は既存の酪農用装置を使って散布できるため、酪農家は自らの食料生産を改善できます。また、化学肥料の必要性が減り、より循環型の酪農経営となります。

新しい技術と強化堆肥は実地試験を繰り返してその効果をテストします。堆肥を処理することで酪農場はCO2の排出量を大幅に削減できます。

新しい技術と強化堆肥は実地試験を繰り返してその効果をテストします。堆肥を処理することで酪農場はCO2の排出量を大幅に削減できます。

酪農家にとってのメリット

この新しいソリューションにより、化石燃料系の業界で一元的に行われていた窒素肥料の生産が、再生可能な電力と空気のみを用いた酪農場での現地生産に事実上移行します。酪農家は自分の酪農場で肥料を生産できるので、化学肥料を購入する必要はなくなります。酪農家は費用対効果の高い持続可能な肥料を手に入れることで、化学肥料サプライチェーンに対する依存度が低くなります。

化学肥料への依存から脱却し、さらにアンモニアとメタンの排出量を削減することで、酪農家はさまざまな規制に順守し、温室効果ガス (GHG) フットプリントをさらに改善することができます。また、この処理により、化学薬品を添加することなくスラリーのpH値を下げることができます。スラリーを酸性化することで貯蔵中や圃場での施用の際のアンモニア排出量は95%減少し、プラズマ処理によりメタン排出量は全体で99.9%減少します。これらを組み合わせることで酪農場のカーボンプットプリントは最大30%削減し、収穫量は40%増加して、大気汚染は50%削減されます。 

また、スラリーの強烈な臭いや周辺住民への悪臭の被害が大幅に減少するという大きな副次的効果も得られます。

バイオガス消化物の処理

この技術は家畜スラリーの処理だけでなく、バイオガス消化物の処理にも適しています。この場合も、バイオガス消化物の窒素含有量が増え、アンモニアとメタンの排出量が減少する点がスラリー処理と似ています。バイオガス消化物は、一般にアンモニア-N含有量が多く、pH値も高く、貯蔵中や圃場での施用の際に多量のアンモニアとメタンを排出します。プラズマ処理は、嫌気性の消化設備にも付加価値をもたらします。 

「この新しい技術は、持続可能な酪農慣行を支援し、世界の食料事情の改善に向けた次世代酪農へのアプローチに役立つ重要なステップです。」GEA酪農技術部門のチャネルおよび事業開発部長Adel Sharifiはこのように述べています。 

搾乳、給餌、堆肥に関する次世代酪農ソリューションをライブで体験したい方は、ユーロティア・ハノーバーのホール13のブースC26までぜひお立ち寄りください。

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