2025年8月25日
地球温暖化の影響は世界中でますます明らかになっています。あらゆる地域の町や都市が同じ課題に直面しています。それは、信頼性が高く、手頃な価格で、持続可能な供給源からの熱を地域社会に供給することです。GEAは、この分野の専門家であるGEA Heating & Refrigeration TechnologiesのヒートポンプマネージャーであるKenneth Hoffmannに、地球温暖化への迅速な対応について話を聞きました。「技術はすでに存在し、解決策も整っている。あとは可能な限り迅速にそれらを導入するだけです」
GEA 地域暖房専門、Kenneth Hoffmann
Kenneth Hoffmann (KH):いえ、そのようなことはありません。ガスに頼る必要はまったくありません。屋内の温度が 18-21 °C (64-70 °F) 程度に保たれているのであれば、快適さを求めて 600 °C (1,112 °F) でガスを燃焼させる必要はないのです。それはまったく理にかなっていません。
KH:はい、あります。ヒートポンプ技術です。ヒートポンプを使えば、屋外から取り込んだ空気の温度を上げることができ、そうすればガスを使用せずに住居を非常に快適にすることができます。
KH:その通りです。効率的で低炭素な暖房技術が台頭しています。しかし、ヒートポンプやその他のクリーンな暖房オプションは容易に入手可能で効果が実証されているにもかかわらず、2050年までにネットゼロ排出* を達成するシナリオに沿うためには、大幅に迅速な展開率が必要です。国際エネルギー機関 (IEA) によれば、地域暖房ネットワークは、ゼロカーボンの冷暖房実現に向けた重要な足がかりになるということです。地球規模のエネルギー分野におけるロードマップで、IEAは2030年までに世界中の諸都市で3億5千万戸に供給するのを目指しています。
*パリ協定に基づく
KH:はい、実際、それがまさにヒートポンプ技術に基づく地域暖房システムで達成できることなのです。このコンセプトを多くの住宅に適用すれば、前に進む大きな一歩となります。しかし、それを産業規模で、つまり地域全体やコミュニティ単位で実施すれば、待望のゲームチェンジャーとなるのです。
GEA の標準ヒートポンプは95 °C (203 °F)まで対応可能と高水準。
KH:現代的で効率的な地域暖房システムは、アンモニアベースのヒートポンプを採用しています。再生可能エネルギーを理想的な形で少量投入するだけで、このソリューションは、データセンターなどの産業廃熱、下水、地中熱、地下鉄ネットワーク、そして空気などの様々な熱源から熱を生成することができます。生成した熱は最大 95 °C (203 °F) まで上昇させたあと、近隣の暖房や給湯設備、あるいはその双方に直接供給することができます。
KH:このシステムは人口密度の高い地域で最も効果を発揮します。地域の初期開発時や大規模なインフラ整備時に設置すれば最も経済的とされていますが、それが必須というわけではありません。例えばスウェーデン南部の都市マルメでは、港に近い下水処理場とゴミ焼却場の隣に、10MW(34,121 MBH)のGEAのヒートポンプが4基、設置されています。これらのポンプによって現在約10万世帯の総エネルギー消費量の8%がまかなわれており、毎年5万トン弱のCO2が削減されているのです。エストニアのタリンでは、4台のGEAヒートポンプ(3台のGEA Grasso LTスクリューコンプレッサー(XBモデル)と革新的な70バールのGEA Grasso L XHPスクリューコンプレッサー(初稼働機)を含む)が、バイオマスCHPプラントからの廃熱を効率的に再利用しています。これにより、需要ピーク時の化石燃料使用量を削減し、炭素排出量を低減するとともに、約8,000の家庭や事業所に対して安定した費用対効果の高い熱の供給を実現しています。これらは GEA のエンジニアが毎日世界中で精力的に取り組んでいる、GEA のアンモニア駆動式ヒートポンプの利点を地域暖房システムに活かすためのたゆまぬ努力のほんの一例にすぎません。
エストニアのタリン市Utilitas Väo熱電併給施設に導入したGEAヒートポンプ発電所。
Kenneth Hoffmann
GEA Heating & Refrigeration Technologiesのヒートポンプ担当マネージャー
KH:そんなことはありません。ヒートポンプは、ガス燃焼や直接電気ボイラーと比較して、一次エネルギー(電力)1kWhあたり最大5倍の熱エネルギーを生成します。これにより、総電力使用量を許容範囲内に抑えることができます。再生可能エネルギーによる発電が増加する中、本日設置されたヒートポンプは、100 %再生可能エネルギーによる電力になるまで二酸化炭素排出量を年々減らしていくことができます。エネルギー効率とガス燃焼量の削減を組み合わせることで、脱炭素社会を実現できるようになるのです。
KH:暖房は世界のエネルギー消費量の半分以上を占めており、炭素排出量において間違いなく大きな役割を果たしています。再生可能エネルギーを劇的に拡大し、無駄になる熱を利用するためのシステム主導のアプローチの重要性は、いくら強調しても足りません。同様に不可欠なのは、石炭やその他の化石燃料を段階的に廃止しつつ、将来に向けた革新を推進していくことです。地域暖房におけるヒートポンプの利用は、地球環境に貢献するだけでなく、地域にも効果をもたらします。ガスボイラーとは異なり、ヒートポンプは窒素酸化物(NOx)を排出しません。その結果、市街地における空気の浄化につながるほか、経済的なメリットもあるのです。加えて、アンモニアの使用は、地域暖房の技術開発における重要な進歩のひとつです。多数の旧式システムでは、ヨーロッパ全域で段階的に廃止されつつあるフッ素系ガス(F ガス)がいまだに冷凍機に使用されています。アンモニアは F ガスとは異なり、気候に優しく、広く普及しており、安価で地球温暖化に影響をおよぼしません。
Kenneth Hoffmann
GEA Heating & Refrigeration Technologiesのヒートポンプ担当マネージャー
KH:私たちには重要な役割があると信じています。GEA は近年、この技術開発の最前線に立ってきました。GEA のエンジニアはまず方法論を検討し、習熟した上で、地域社会への貢献や、電力会社から発生する CO2 の大幅な削減など、本当に効果のある形でこの技術を応用しています。GEA はヒートポンプの製品シリーズを増やしながら、地域暖房事業におけるリードを保つために常に革新的な取り組みを行っています。ご存知の通り、ヒートポンプ自体は目新しい技術ではありませんが、再生可能エネルギーの利用が急速に拡大する中で、二酸化炭素排出量削減の取り組みにおいてその重要性が増しています。この高効率な熱変換方式と家庭や自治体の建物向け地域暖房システムの開発を組み合わせることにより、革命を起こせる可能性があるのです。さらに、アンモニアなどの自然冷媒の利用が進むことで、「環境にやさしい」地域暖房を実現するための技術も整ってきています。