腫瘍用薬生産ライン: Zydus Cadila 社

シングルポット加工

当社は完全な腫瘍用薬生産ラインをあるインドの顧客に提供しました。その結果、(国際的に認められた規格に従って) オペレータの健康や安全が確保されただけでなく、生産性が向上し、生産サイクル時間が短縮され、最終的な封じ込めソリューションも実行に移すことができました。

封じ込めを施した固体製剤の生産


封じ込めの問題は、固体製剤形の生産においてますます重要な側面になりつつあります。API (active pharmaceutical ingredient:医薬品活性成分) は常に高薬理活性化しており、NCE (new chemical entity: 新規化合物) の半数以上が強力であると分類されています。同時に、オペレータの健康と安全の保護が、いま世界中で喫緊の課題となっています。さらに、利用可能なハードウェア機器や、封じ込めソリューションは非常に多岐にわたるため、特定の業務に最適な機械装置を選択するのが次第に困難な状況となっています。

これが Zydus Cadila 社 (インドのアフマダーバードに本拠を置く革新的なグローバル医薬品メーカ) のジレンマであり、この会社は、極めて強力な薬剤用の経口固体製剤形の生産工程を改善したいと考えました。そこで、高度な封じ込め装置を使用することを決定し、当社に連絡してきたのです。当社はシングルポットプロセッサを 25 年以上にわたり医薬品産業に供給している、この分野でのリーディングカンパニーです。また、シングルポット、腫瘍及びホルモン用途向けの高度な封じ込めプロジェクトのシステムインテグレータとしての実績があります。

当社には長年にわたる封じ込め分野に関する専門知識と比類のない豊富な経験がありますが、それだけでなく、少量生産対応の似たようなプラントを欧州で多数建設しています。これが、Zydus Cadila 社にとって決め手となるものでした。つまり、UltimaPro シングルポットプロセッサの理想的なソリューションを使用すれば、オペレータの健康と安全を犠牲にすることなく、OEB (occupational exposure band: 職業暴露バンド) 3 及び 4 薬品を安全に取り扱うことができるようになると確信していたからです。

重要な考慮事項

重要な技術的要件がいくつかあります。Zydus Cadila 社が必要としていたのは、オペレータの健康と安全を犠牲にすることなく極めて強力な薬剤を取り扱うことのできる処理ユニットです。理想としては、有害な単一の分子レベルにもオペレータをさらすべきではありませんが、実際は、まったく実現不可能です。封じ込めがどの程度必要で、どのような方法が最適なのかは、3 つの要因、つまり API の性質と有効性、実行される工程の種類、オペレータの作業環境によって決まります。

専門家でない機械装置サプライヤは、封じ込め装置についてもっともらしい宣伝文句を並べたり、明確に定義されていない試験条件に基づく数字を提示したりする可能性があります。単なる機械装置サプライヤとは対照的に、当社は非常に優れたソリューションプロバイダであり、スプリットバルブ技術 (GEA BUCK® Valve) を発明しています。さらに、ISPE の専門家による作業部会 (医薬品会社、エンジニアリング企業、封じ込め装置のサプライヤから構成) の結成へと進み、一般に認められている試験手順のガイドラインを策定しました。ここには、前述のパラメータがすべて定義されています。1 この一般に認められている試験手順では、定義済みのグレードの乳糖を使用し、装置を特定の環境 (湿度、温度、換気の回数) に配置するとともに多数のサンプル採取フィルタを正確な位置に取り付けています。この試験には、対象とする作業の実行と 15 分間の大気サンプルの採取が伴います。フィルタを分析すると、一定量の大気中に多量の乳糖が採取されているのがわかりますが、これがこの装置の封じ込め性能です。

Zydus Cadila 社では、製品または周囲大気の汚染を防ぐために生産環境へのすべての製品の移行を効果的に封じ込める必要がありました。この工程の終了時 (及び製品切り換え時) には、製品の接触を避けるため、完全に検証された CIP (cleaning-in-place: 定置洗浄) サイクルが必要でした。全工程が cGMP (Current Good Manufacturing Practice: 医薬品適正製造基準) に準拠していることが条件で、また当然、(高価な) 製品の生産量の減少を避ける必要がありました。以下に、ベンダーの選択過程において検討された重要な基準を示します。

1.製品

一般に、ある物質の有効性は、OEL (occupational exposure limit: 職業暴露限界) または ADI (acceptable daily intake: 許容 1 日摂取量) で特徴付けられます。ADI は、健康への悪影響を及ぼさずにオペレータが吸収できる、特定の薬物の絶対量を示します。同様に、OEL は生産室の大気中で許容できる薬物の最大濃度を示します。既知の物質の値はテキストに掲載してあります (例: パラセタモールは 10 mg/m3、エチニルエストラジオールは 35 ng/m3)。ただし、これらの値はある前提に基づいており、物質のライフサイクルの途中で変動する可能性があります。2,3 ある物質の OEL を確認できない場合は、数学的に求めることができます。4

さらに、薬剤の有効性は 1 (弱い) から 5 (最も強い) の間に分類できます。これにより、生産装置をクラス X 化合物の生産に適したものとして分類でき、物質の有効性がオペレータに明示されます。ただし、この「単純な」分類体系について説明するときは、2 つの重要な事実を考慮する必要があります。まず 1 つ目は、ほぼすべての企業に独自の分類体系があるように、この分類が普遍的なものではないという点です。もう 1 つは、添加剤による希釈やシフト当たりのサイクル/運転の回数などの要因はめったに考慮されないという点です。

2.封じ込めリスク

ほとんどの生産工程においては、API は密閉機器または容器内にとどまっています。物質的損失の主なリスクが発生するのは、このような機器間の接続を確立または切断する必要があるときや、サンプルを採取する必要があるとき、及び生産活動の終了時に機器を洗浄する必要があるときです。ただし、最新式の多種製品設備であっても、相互汚染は発生します。重要な問題は、どの程度の相互汚染であれば許容でき、どうすれば許容値を下回るよう維持できるのかという点です。

3.相互汚染

相互汚染の許容値は、製品の有効性によって決まります。定義によると、製品 2 の 1 日の最大分量において、製品 1 の活性成分の最低分量の 1/1000 が発見されることまでが許容限度です。EMA (European Medicines Agency: 欧州医薬品庁) は、最近、健康に基づく暴露限界の設定に関する新しいガイドラインを発行しました。このガイドラインは、共用設備でさまざまな医薬品を生産する場合のリスクの特定に使用されます。5 多種製品設備で相互汚染のレベルを下げる一般的な方法は、別々の生産室、エアロック、圧力カスケードを用いることなどです。このような方法は、重要性の低い製品には最適ですが、極めて有効性の強い物質を扱うときは、厳密な封じ込め以外にオペレータの健康と製品の品質の両方を保護する方法はありません。

主要な構成機器

強力な API に対応するマテリアルハンドリングシステムの選択は最も重要です。これによって、設置全体での封じ込め性能が基本的に決定し、ステンレス鋼か使い捨てのシステムのどちらかを選択することになります。スプリットバタフライバルブを搭載した IBC (intermediate bulk container: 中間バルクコンテナ) は、強力な API の処理に最も一般的に使用されているマテリアルハンドリングシステムです。6 バッチに必要な物質は、層流ブースの下で充填され、分配エリアの IBC に入ります。次に、この IBC が造粒エリア内に移動し、スプリットバタフライバルブで排出ステーションにドッキングされます。原材料は、製粉されいくつかの塊に分解されると、重力または減圧気送によって造粒機内に引き込まれます。

さまざまな造粒オプションがあります。強力な API の場合、ごく一部の製剤のみが「活性」です。このような低用量レシピは、ローラ締固などの乾式方法にはあまり適していません。封じ込めが困難で、API の配分にさえも問題が発生します。推奨するのは湿式造粒法です。造粒後は、乾燥、製粉した細粒を IBC 内に排出し、コンテナブレンダで IBC を回転させて均質化し、打錠機を搬送することによって、外部フェーズ/コーティングが追加されます。極めて有効性の強い物質を扱うときは、おそらく錠剤圧縮が生産工程で最も困難な段階です。その理由は、次のようなものです。

  • 打錠機内部の複雑な機械設計と構造
  • 打錠機内外での物質の連続流出
  • 製品切り換え時に、非常に複雑なシステムの洗浄が必要 (上流装置と下流装置を含む)
  • 打錠機とその環境との間の複数のインタフェース (給気口、錠剤の出口、粉末の入口、集塵)、それぞれに封じ込めの相互接続が必要
  • 頻繁な錠剤サンプリングが必要 (手動または自動)

強力な物質を圧縮するために、当社の MODUL™ 打錠機とその ECM (Exchangeable Compression Module: 交換可能圧縮モジュール) による最高のソリューションをご利用ください。ECM は完全に密閉された箱であり、その中には製品接触部品がすべて含まれており、取り外しと洗浄が簡単です。製品及び生産の要件に応じて、通常の封じ込めオプション、または防塵 (C) か高度な封じ込め (HC) のオプションで構築できます。生産時、2 つ目の ECM を使用している間中、ECM をオフラインで取り外して洗浄できます。これにより、機器の切り換え時間が大幅に短縮されます。

これらすべての要因を適切に考慮して、すべての重要な要件を満たす装置に 2 つのシングルポットプロセッサを使用することを当社は推奨しました。つまり、封じ込め対応の Hicoflex® 技術を搭載した UltimaPro™ 10 (10 L の処理ボウル) を開発ラボ用に 1 つと、Hicoflex® 及び MC バルブを搭載した UltimaPro™ 75 (75 L の処理ボウル) を生産用に 1 つです。柔軟な処理、高い生産性、サイクル時間の短縮を実現するために、両方のシングルポットプロセッサに、利用可能な乾燥手段 (マイクロ波など) をすべて搭載しました。

Pharma Technology 社による封じ込め

医薬品の高度な封じ込め

シングルポットプロセッサ: 柔軟性と封じ込め

シングルポットプロセッサは、高剪断力造粒機の工程の利点と、CIP の最小の表面積と組み込み型の設備を兼ね備え、極めて高速な切り換え時間を提供します。シングルポットプロセッサに利用可能な乾燥手段は、真空乾燥、ガス支援真空乾燥 (Transflo™)、マイクロ波乾燥、スイングボウルです。これらすべての手段をマシンに搭載することによって、最適な乾燥パラメータを選択して生産性の向上とサイクル時間の短縮を実現できます。例えば、マイクロ波を使用すると、乾燥時間が大幅に短縮され、製品が容器の壁に付着しないようボウルの温度を制御できるようになります。シングルポットプロセッサのコンセプトは本来、製品の移動を避け、混合、造粒、乾燥の単位作業を 1 台の機器で実行できるようにすることで、封じ込め処理を実現するというものです。

封じ込めによって工程を監視及び分析するために、いくつかのオプションが利用できます。その 1 つは、サンプリングバルブを処理チャンバに取り付け、異なる封じ込めレベルに適用するというものです。この結果、機器を停止してボウルまたはポートを開ける必要がなくなります。サンプルコンテナは完全に封じ込められるため、サンプルを大気にさらすことなく QC ラボに搬送できます。より小型の機械装置には、Hicoflex® サンプリングシステムを使用できます。もう 1 つのオプションは、オンラインの分析プローブに使用する PAT ポートを提供することです。これにより、リアルタイムの工程監視が可能となり、リアルタイムのリリースが有効になり、サンプリングが不要になります。

CIP が封じ込め戦略の重要な部分を担うことによって、幅広い WIP (washing-in-place) と完全自動化の CIP オプション (格納式スプレーノズルや、製粉機などの下流装置) を UltimaPro™ に供給できます。UltimaPro™ の完全な CIP レポートはオンラインで入手できます。

Zydus Cadila 社の利点

当社はこの会社に完全な腫瘍用薬生産ラインを提供することができました。提供されるハードウェアソリューション (特に、スプリットバルブと打錠機) は、極めて強力な API の取り扱いの面で最先端の技術を使用しています。プロジェクト全体を社内で管理しました。まず、必要な封じ込めの数に関するリスク分析を行い、建物全体の設計、設置及び操業開始のソリューションを進めました。さらに、インドの現場でも、現地の同僚がプロジェクト全体を管理しました。主要な構成機器 (スプリットバルブ、打錠機、シングルポットプロセッサなど) のみが欧州製です。すべてのオプション、Hicoflex® 技術と MC バルブを搭載した UltimaPro™ 10 と 75 を選択することによって、Zydus Cadila 社は、安全な cGMP 準拠の環境で OEB (occupational exposure band: 職業暴露バンド) 3 及び 4 薬品を生産し、サイクル時間を短縮しながら最大限の生産性を保証できるよう徹底しました。

.オペレーション担当社長の S.G. Belapure 氏は次のように述べています。「我社は極めて強力な経口固体製剤形を取り扱っているため、安全で、cGMP に準拠し、オペレータの健康と安全を守ることのできる処理ユニットを探していました。また、生産量を最大限にし、高価な製品の損失を防ぎ、サイクル時間を短縮する必要もありました。これらのことが決め手となり、この技術を購入して GEA と連携することを決断したのです」

参考文献
  1. www.ispe.org/ispe-good-practice-guides/assessing-particulate-containment-performance.
  2. ISBN 07176 2083 2 EH40/2002 OEL 2002
  3. ISBN 07176 2172 3 EH 40/2002 Supplements 2003.
  4. http://potentcompoundsafety.com/2011/07/uncertainty-modifying-factors-occupational-exposure-limits-pharmaceuticals.html.
  5. www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Scientific_guideline/2013/01/WC500137091.pdf.
  6. www.ispe.org/ispe-good-practice-guides/assessing-particulate-containment-performance.
封じ込めの規則

英国では、COSHH 規則に次のような規定があります。「雇用主の第一の義務は従業員の健康を守ることです」国ごとに規則の状況が異なっていても、このような表現は、強力な物質を取り扱うときの一般的な指針として登場します。欧米諸国の全人口の約 30 % が一生のうちで何らかの癌にかかることを考えると、癌になった人が製薬会社で働いていたときに発癌性物質にさらされていた場合、その会社に対して法的賠償請求が行われる可能性があります。その結果、高額な賠償金が発生し、会社のイメージダウンも免れません。このような事態を避けるには、会社は最高の技術で従業員を保護していたことを証明できなければなりません。COSHH 規則には、対応策の明確な階層が示されています。

  • 発生源で除去する
  • 有害性の少ない物質や剤形に置き換える
  • 臨界極限を下回るように量を削減する
  • オペレータの許容範囲を超えた暴露を防ぐよう、エンジニアリングにより制御する (封じ込め処理)
  • 運営管理を行う
  • PPE (personal protection equipment: 個人保護具) を使用する

他の多くの国では、このような階層を義務付ける法令はありません。欧米諸国のほとんどは、輸出国のオペレータの労働環境を監視します。これは、世界の他の地域の健康と安全を脅かす仕事を支援するのは、極めて非倫理的に思えるためです。

Pharma CS Zydus Compression

Zydus Cadila 社: ソリューション

シングルポットプロセッサ: UltimaPro™ 75 及び UltimaPro™ 10 (研究開発用)。Material Handling Solution: マテリアルハンドリングソリューション: BUCK® MC 100 バルブを搭載した IBC、Vibroflow™ブレンドプリズム、アイソレータから API を排出してシングルポットプロセッサに投入する Hicoflex®、IBC 充填装置、及びポストホイストブレンダと当社の錠剤圧縮機器に搭載される BUCK® MC バルブ、IBC 洗浄装置、及び WIP 排水フレームなどがあります。 錠剤圧縮機器: HC ECM を取り付けた MODUL™ P。
GEA の最新情報をお届け

GEA からのニュース配信にサインアップして頂ければ、GEA のイノベーションやストーリーの最新情報を受け取ることができます。

連絡先

ご要望をお伺いいたします。ご要望の詳細をご入力いただければ、お問い合わせに回答いたします。