凍結乾燥効率の向上を目的としたネスト入りバイアル

ネスト入りバイアル

凍結乾燥バイアルは、通常、処理および充填の前に洗浄されて滅菌されます。これらのタスクを実行するには、必要な封じ込めレベルに応じて、クリーンルーム、洗浄装置および滅菌トンネルの使用が必要です。ただし、効率を向上し、時間と費用の両方を削減するには、予洗して滅菌済みのすぐに使用可能なパッケージ材料を使用することが1 つのソリューションであり、プロセス全体の改善につながります。

すぐに使用可能なネスト入りバイアル

製品の新規開発、少量バッチの増加、製品の効能の強化、および柔軟性と効率性の高いバイアルおよびシリンジ充填ソリューションの必要性から、医薬品およびバイオ技術産業では、凍結乾燥プロセスの高速化、安全性および費用対効果の向上に対して常に変わらぬ需要があります。

SCHOTT 社により新たに開発されたそのような製品の 1 つが、adaptiQ® ネスト入りバイアルシステムです。これは既存のネスト充填システムで使用できる上、製薬会社はネストに入れたまま充填済みのバイアルを凍結乾燥および処理することができます。GEA との協力により、このシステムは、標準のパイロットプラントと生産規模の凍結乾燥機の両方で凍結乾燥プロセスの持続可能性を確認するために、特に、標準のロードおよびアンロードシステムを使用した場合の取り扱い能力を評価するためにテストされました。

「バイアルは密閉されたネスト/タブ構成で清潔で、滅菌され、すぐに使用できる状態で提供されます。ユーザは、このネスト/タブを封じ込め領域 (オープン/クローズド RABS システムまたはアイソレータ) に持ち込むことができます。ここで、そのネスト/タブを手動または自動で開くことができます。」 

adaptiQ®

GEA の ALUS™ の Product Manager である Johannes Selch は、結果を次のように論じています。「当社とSCHOTT 社は、」と彼は言います。「生産環境でネストバイアル製品が、特に取り扱い (ロードおよびアンロード) の点で、凍結乾燥プロセスにどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることに重点を置きました。その明らかなメリットは、充填ラインの前に、洗浄装置や滅菌トンネルを使用する必要がないということです。バイアルは密閉されたネスト/タブ構成で清潔で、滅菌され、すぐに使用できる状態で提供されます。ユーザは、このネスト/タブを封じ込め領域 (オープン/クローズド RABS システムまたはアイソレータ) に持ち込むことができます。ここで、そのネスト/タブを手動または自動で開くことができます。」基本的に、すべてのプロセスステップはネスト内で実行でき、取り扱いは円滑で信頼性が高く、ガラス同士の接触はありません。コンテナ生産、脱パイロおよび洗浄はネストに入れる前に行われ、ネストに入れた後に、気体エチレン酸化物 (ETO) によってパッケージが滅菌されます。バイアル/タブの輸送、充填、ストッパの設定、凍結乾燥およびプレスフィットキャップによる封鎖はすべて、バイアルをネストに入れた状態で実行できます。インプロセス制御およびクリンピングのために、バイアルをネストから取り出し、その後さらに処理するために再度ネストに入れる必要があります。

彼は次のように付け加えています。「通常、凍結乾燥プロセスを稼働する場合は、ユーザがバイアルフレームやトレイを洗浄して滅菌する必要があります。また、プロセス後にも、その洗浄/滅菌ステップを繰り返す必要があります。ネストに入れたバイアルを使用した場合、その必要はありません。ネストに入れたバイアルは 1 回きりの使い捨ての技術であるため、凍結乾燥後の洗浄ステップは必要ありません。」

その他の主要なポイントは次のとおりです。

柔軟性: 既存のネスト付き充填装置を使用できます。少量バッチの充填を最適化する機械が利用可能です。

製品品質: バイアルは密閉されたネスト/タブ構成で清潔で、滅菌され、すぐに使用できる状態で提供されます。輸送、充填および終了時に、ガラス同士の接触はありません。また、このシステムでは、強力な製品に対する安全面でのメリットが向上しています。

保有コスト: 使用資本と運転費用の削減、充填時の欠陥の最小化、および必要なクリーンルーム空間の削減を実現しています。

幅広いサイズ

個々のネストを結合したり、業界の標準タブ形式の 2/4R (100 バイアル) や 6/8/10/15R (48 バイアル) から 20/25/30R (25 バイアル) までの、幅広いサイズを使用できます。バイアルは、その周囲にある 3 つのクリップを使用して、ネックによりネスト内の所定の位置に保持されます。そのため、他のバイアルと接触することはなく、傷や破損が防止され、その結果として棄却率が低下します。ネストにはまた、凍結乾燥機での取り扱いのための壁、手動での取り出しのためのフィンガカットアウト、および正確な位置決定のための位置合わせガイドが付いています。さらに、既存のネスト充填機および新規の柔軟な充填装置に合わせて設計されているため、このシステムは研究開発 (R&D) 規模から商業生産規模へと拡張できます。 

テスト条件の下で

「標準のトレイロードシステムを使用してネスト入りバイアルをテストしたところ、まったく問題なく動作しました」と Johannes は述べています。「ネストがまとめて固定されていたのか、固定されないままだったのかは関係ありませんでした。標準のシステムを使用したアンロードもまた、問題ありませんでした。」彼は、相互接続性が手動処理では大きな役割を担う可能性があるものの、自動化システムでは、ネストを個々のユニットとして使用できるとコメントしています。「開発および少量のバッチで非常に高価な製品を処理する際に、この接続性がメリットとなります。というのは、手動ロードとアンロードが促進されるからです。」と彼は述べ、次のように続けました。「ここでの主なメリットは、簡単かつ安定したロード/アンロード、およびロード/アンロードの高速化の結果としてのダウンタイムの低減です。」

ネストへの出し入れはまた、非常に簡単に自動化できます。これにより以下のことがもたらされます。

  • 信頼性のあるバイアルの取り出し (個別またはバッチ単位)
  • 重量測定/封鎖後のバイアルの安定した再挿入

ネスト処理をさらに促進するために、マシンベンダとのさらなる研究が進行中です。封じ込めの問題はネスト入りバイアルを使用すると防ぐことができます。これは、オープンおよびクローズドの両 RABS 、アイソレータおよび GEA の Automatic Loading and Unloading System (ALUS™) に適しています。

処理容量の制約

処理容量に関し、Johannes は次のように述べています。「我々は、フレームやトレイなしの標準のロード/アンロード手順を使用したときに処理できるバイアルの数を、ネスト有りの場合と無しの場合で計算しました。標準の棚寸法を持つ凍結乾燥機を使用した場合、ネスト入りバイアルを使用したときには、ネストなしの場合と比べて最大 40% の処理能力の低下が記録されました。

この結果について、Johannes は次のようにコメントしました。「我々は、1 分間に 200 ~ 300 のネスト入りバイアルを処理して効率全体を向上することができます (100 バイアル/ネストは、2 ~ 3 ネスト/分に相当します)。ただし、40 % の処理能力の損失は重大です。ネスト入りバイアルを十分に利用し、この損失を将来的に埋め合わせるには、設計段階でこの問題に対処し、カスタムな凍結乾燥機を作成する必要があります。」

ネスト入りバイアルは、最初は、非常に高価な製品の処理に使用されると推測されます。システム本来の安定性の向上が、高価値または超高活性の化合物にとって明らかなメリットであることは明白です。また、バイアルの落下や損傷がないことを保証できることも、重要な考慮点の 1 つです。ネストなしでの平均落下率が 0.02 % でも、高度な封じ込め施設で作業する場合や毒性産物の供給が制限されている場合には、この落下率は問題であり、それを修正するには時間がかかります。

Johannes は次のようにつけ加えています。「現在の傾向は、ネスト入りバイアルは大量、低価値の製品処理には使用されず、高価値製品の小さなバッチにのみ使用されることを示しています。ただし、これは自動ロードおよびアンロードシステムの使用を除外するものではありません。特に強力な製品が関わる場合に、オペレータの介入を防ぎ、汚染リスクを低減し、製品とユーザの両方を保護するために、自動ロード/アンロードシステムがますます頻繁に使用されます。」

処理テスト

パイロットプラント規模での比較乾燥テストでは、3 % のマンニトール溶液が標準の凍結乾燥機で処理されました。ネスト入りバイアルとネストなし (六角構成) バイアルが使用されました。このテストでは、バイアルをネストに入れると、乾燥サイクルの時間が 10% 短縮されるという結果が示されました。つまり、周囲を囲むプラスチックには有害な断熱効果はなく、ネスト内にバイアルを密集しないように配置することで総乾燥時間に良い影響をもたらすと結論付けることができました。

生産レベルの凍結乾燥機にスケールアップした場合にも、比較テストは 3% のマンニトール溶液を使用して実行されました。再度、同様の結果が得られました。

さらに、ストッパについても調べられ、その結果はどちらのバイアルセットでもほぼ同じでした。ただし、バイアルをネストに固定すると、ストッパが凍結乾燥機の棚に固着しなくなること、また、手順の実行中にネスト入りバイアルの落下がないことは注目に値しました。

残留含水値を確認すると、コンテナの端では、ネスト入りバイアルの結果がネストなしバイアルよりもわずかに良好であることがわかりました。バイアル間に余分の空間があるため、昇華フローが向上して残留含水量の総レベルが低下します。「つまり、残留含水量のレベルでの些細な差異は別として、生産規模の凍結乾燥プロセスでは、ネスト入りバイアルとネストなしバイアルから得られる結果にはまったく違いはありません。データは非常に似ています。」と Johannes は述べています。

「ただし、医薬品市場にとっては、ネスト入りバイアルが、標準のロート/アンロードシステムを搭載したパイロット規模および本格規模の凍結乾燥機の両方でリスクなく、効果的に使用できること、および通常の六角形のバイアル構成 (図 4) を使用する場合と比べても同じ結果を得られることを示すことが重要です。さらに、我々が知るかぎり、凍結乾燥された最終製品を決める場合にも、ネスト入りバイアルに関わるデメリットはありません。」と彼は付け加えました。

要約すると、SCHOTT adaptiQ® バイアルでは、ネストを使った凍結乾燥が可能です。また、既存の自動ロードおよびアンロードシステムでネストを使用できることも明らかです。これらは、ネストは実績ある材料から作成すること、また、ネストからバイアルを取り除くことなく、繊細な製剤の凍結乾燥を可能にするためにバイアルの底部に自由にアクセスできることという医薬品産業の要件を満たしています。プレフィラブルシリンジのために使用されるネスト/タブ構成は、同等または迅速な乾燥サイクルを可能にするパッケージの粗密化を実現します。

すぐに充填可能な滅菌バイアルの価格は従来のバイアルと比べて高いため、総保有コスト (TCO) レベルで埋め合わせできる額を上回ります。投資、エネルギー使用量およびユーティリティの消費はすべて、洗浄装置、注射用水 (WFI) システムおよび滅菌トンネルをなくすことにより、削減できます。また、大手製薬会社は非常に保守的であるにもかかわらず、研究開発規模と本格規模の生産のどちらでもこの技術の用途は明らかです。アジアでは、1 つのシステムがすでに稼働しており、始動期間にあります。GEA の凍結乾燥機にバックプッシャアンロードシステムを搭載して、本格規模の生産が 2015 年に開始される予定となっています。

結論

標準の凍結乾燥およびバイアル処理生産サイクルでは、ネスト入りバイアルがネストなしバイアルの後継になる可能性はありません。ただし、この革新的な開発は、将来の生産についての新たな可能性を開いています。ネスト入りバイアルの処理は、既存の定評ある凍結乾燥装置に簡単に実装できます。そのため、ネストと技術の両方を「すぐに使用する」ことができます。

参考文献

  • F. Merlie、『Higher Efficiency for Pharmaceutical Companies』の「SCHOTT Solutions1」、43–45 (2014)
  • G. Deutschle、『Schott fills a Need to Improve Efficiency』の「Man.Chem」(www.manufacturingchemist.com/technical/article_page/Schott_fills_a_need_to_improve_efficiency/97826)

凍結乾燥機 ALUS web

効率の向上と汚染リスクの最小化

凍結乾燥 ALUS

ALUS™ (Automatic Loading and Unloading Systems) は、凍結乾燥機へのロードおよびアンロード時の人間の介入による汚染リスクを最小限に抑えます。自動ロード/アンロードにかかる時間は手動ロードと比べてはるかに短いため、自動ロードおよびアンロードプロセスを使用して処理される製品の量は増加しています。最新式の監視システムを使用すると凍結乾燥プロセスの管理に必要なオペレータの数を減らすことができるため、運用費は削減されます。
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